父の魂・33

ボクの夏休み


ちょっと時期がずれちゃいましたが、今回は今年の夏休みのお話。

我が家の息子は小学1年生。初めての自由研究のある夏休みです。

小学校の自由研究は、工作ありいの観察日記ありいの旅行記ありいの・・・と、いろいろです。
夏休み明けに自由研究の展示会に行ったりすると、親がかなり手を入れた作品からほぼ子どもの独力と思われる作品まで、いろいろなものが展示されていてなかなか面白いです。

中には
「お、この工作を手伝った親父はモデラーに違いない!」
と思えるパッションに満ちた作品もあったりします。


心穏やかに見られないのが、旅行記です。

「夏休みイギリス旅行の記録」なんていうタイトルの自由研究なんかあろうものなら、

「くそー!うらやましいー! なんだいなんだい小学生のクセに。
 オレの初めての海外旅行は27歳の新婚旅行だい!」

と思わず悪態をつきたくなってしまいます。



それはさておき、


今年の夏休みが始まった頃、私は嫁さんにキツく言われておりました。

「パパ! 今年の自由研究の工作は頼んだわよ!」

本来夏休みの宿題は子ども本人がやるべきもので、自分で作ってみて初めてモノ作りの大変さや面白さを知るものなのに、親がそのように入れ込んじゃダメでしょ・・・のような、父親としての正論を私がいうと・・・

「パパは子どもが恥をかいてもいいの!?
 夏休みの工作でつらい思いを子どもにさせたいの!」


・・・・・・と嫁さんは今にも泣き出さんばかりの勢いです。

うーむ。どうも彼女には小学校の頃の工作についてよっぽど悲しい思い出があるに違いないと確信しました。

さらに嫁さんはこう言い放ちました。

「パパの役に立たない模型の技術が生かせる唯一のチャンスなのよ!
ここで生かさなかったら、どこで生かすの!!」

・・・どこで生かすも何も、模型を作ってること自体が目的なんだから、そこまで言われる筋合いはないはず・・・・と思いましたが・・・

「はい、作ります」

・・・とお答えしておきました。



夏休み中盤、さて、そろそろ工作の宿題でも片付けるか・・・・という時期になりました。

「工作は何を作るかなあ。何がいい?」

息子が答えます。

「恐竜のじおらま」

じ、ジオラマだとう・・・?

うーむ、さすがに私の影響か・・・小学1年生で「ジオラマ」という言葉が吐けるやつは、日本国中探しても、そう何人もいないはず。


「じゃあ、ベッカムザウルスっていう名前で、とさかアタマでサッカーしてる恐竜にするか」

(う〜ん、我ながらタイムリーでナイスなアイディア! 8月時点ではまだベッカムには新鮮さが残ってました)





「やだ!そんなのカッコわるい!
チラノザウルスがいい」


小学生には冗談や遊び心が通じません。正攻法のカッコいい恐竜を作りたいらしいのです。
(この無粋ものめ・・・)


材料は紙粘土。模型用に買っておいた2ミリ径のアルミ針金を芯にして、紙粘土を貼り付けて作ります。

チラノザウルスだけだとつまんないので、雷竜(ディプロドクス系ね。時代が違うけど)も作ることにしました。

恐竜の戦いのジオラマです。

針金の芯は私が作り、紙粘土は息子が貼り付けて色も息子が塗るっていう段取りです。
ところがやってるうちに楽しくなっちゃって、チラノザウルスは息子、雷竜は私が担当という分業に変わってきました。



息子のチラノザウルスのまずいところを少々手直しして、乾かして絵の具で色を塗らせます。
ぬらせるのはいいのですが、私としてはすごく気になっちゃいます。

でも

「おなかの色は薄くして、背中の色を濃くするといいぞ。」

アドバイスはそれだけにして、我慢して見守ることにしました。




・・・・・・・・・・・

・・・あ!塗りすぎだ・・・

・・・ああ!すごくはみ出した。

・・・あああ!下半身だけこげ茶色にしたらズボンはいてるみたいじゃんか・・・


くー! ほとんどノドから声が出かかりますが、かろうじて我慢して

「おお、いいねえ・・・・」

などと、おおらかな父親を演じます。


くそー、こうなったら雷竜のほうは、ワシの思い通りに塗ってやる!

雷竜の塗装は息子に手を出させませんでした。なんというオヤジでしょう。今思うと大人気ないと思います。



次にジオラマのベースです。

色画用紙で草を作ることにしまして、私が見本を見せます。

次に子どもが作りましたが、草というより、藻屑みたいになりました。
まあ、これもご愛嬌でしょう。



「これで木を作る!」

と息子はトイレットペーパーの芯を持ってきてクレヨンで色を塗り始めました。
ヤシの木なら私も砂漠のジオラマで経験があります。テキトーに手伝ってやって、木が完成しました。


さあ、今度は地面にレイアウトだ!

さっき作った木や草をホットボンドでくっつけるんですが、
目立つところにはどうしても私が作った部品を置きたくなります。

子どもの作品なのに、どうしてもデキの良い自分作のパーツを手前に置いてしまう父親とは、いったいなんなんだろうと・・・悩むんですが、やっぱり最善はつくしたくなります。




でけた!
息子は大喜び。










チラノザウルスなのに角があるのはご愛嬌。
ウンコがあるのは、お約束・・・。



ふー、一仕事終えた後のコーヒーはうまいぜ・・・。





しかしここで、私はハタと心配になりました。


私が小学生の頃は、明らかに立派な工作を学校に持ってくると

「やーい! 親が作った工作だー! ずるいぞ!」

と、いじめられたものです。


息子もいじめられるんじゃないか・・・・。


えーい!作っちゃったものは仕方がない!

息子よ、世の中の厳しい風にあたってこい!





夏休みが終わって、いよいよ工作を学校にもって行く日となりました。


その日私が仕事から戻ると、嫁さんから

「今日は○○(息子の名前)、ものすごいご機嫌で帰ってきたわよー
友達に すごい!とか
天才的!って言われたんだって。
おーっほっほっほ」


小学校1年生ぐらいじゃあ、まだ批判精神とかはないのか・・・。
息子はますます増長しそうです。

ちくしょー、息子め、自分ひとりで作ったような気になって
しかもいい目をみやーがって!

世の中ホントはそんなに甘くねーんだぞ!



2002/10/05

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