父の魂・22

人それぞれ

クチから先に生まれてきたような息子はむちゃくちゃお喋りで、5歳児のくせに的確なイヤミを間髪を入れずに言える、まことにうらやましい野郎です。

私の場合は、人からクチで攻撃されると、まずアタマに血が昇って何にも言えなくなっちゃうのですよ。
あとで「ああ、あの時こう言ってやれば良かった!」と、とっさの切り返しができなかったことを地団駄踏んで悔しがることもしばしば。

口喧嘩が得意な人ってうらやましいのです。


この私に良く似ていて、息子と正反対なのが娘です。

9歳の娘は、最近こそ良く喋るようになりましたが、小さい頃は幼稚園のできごともなかなか話してくれないようなおとなしい子でした。

その娘が幼稚園入園前の3歳ごろの出来事です。

近所のクチの達者な1歳年上の女の子達とマンションの裏庭で遊ぼうとするんですが、なかなか話に混じれない。

まあ、3歳だからしょうがないですよね。
相手は幼稚園で鍛えられてるつわものですから。
しかもちょっとイジワル。

そのマンションでは、暗黙の了解で、遊んでる子の親の誰かが子供たちを見てやるのですが、私が見てるときは、娘が不憫で不憫で・・・・・・。

縄跳びを横取りされても言い返せない・・・・。

3輪車に乗ってて「ちょっとかして」とムリヤリ押しのけられても、何も言い返せない。

くそー!殴りかかって取り返してこいよー!とお父さんの心は身もだえして念じております。

しかし、子供の世界のこと。よっぽどのことがない限り、子供の中に割って入れません。

虐げられている(大げさ)我が子を見る親の気持ちは、当事者になってみないとわかりません。

本当に悔しいんですよ!

娘に代わってイジワル4歳児を殴ってやりたい衝動をかろうじて抑えながら笑ってみている親の気持ちを、いじめっ子の親は知るべきです。かわりにたたいてやってください。


そんな娘も家の中に入ると元気です。

当時流行っていた「美少女戦士セーラームーン」を一生懸命見てる姿が愛らしかったです。

当然主題歌も覚えます。

主題歌を歌う娘に
「やあ、よく覚えたねえ。上手に歌えるねえ」
と誉めてやるとニコーッとして喜びます。


ある日、マンションの裏庭で私が子供たちの守り番をしてると、
なにか、うちの娘と例のイジワル4歳児が口論になってるように見えました。

よく見てみると、娘は覚えたてのセーラームーンの主題歌をその子に向かってたどたどしくも一生懸命うたってます。

そのイジワル4歳児は
「なにうたってんのよ」「へたくそねー」

とか言ってます。

私は一瞬で理解しました。

娘がよどみなく言い返せる手段は、歌しかないのです!

くやしくて仕方がない娘は、理不尽な相手に対して言葉で返そうにも、言葉が出てこない。

だから、お父さんに誉めてもらった覚えたての歌を一生懸命歌うしかないのです。

もう見ていて、涙が出そうになりました。

「くそー! へたくそなんて言うな!」と心の中で叫びながら娘を目で応援しました。

娘が遊び終えて家に帰るとき
わたしは「上手だったね。一生懸命歌ったね」という思いを込めておててをつないでやりました。

父親にできることはそれぐらいです。



そういう幼児時代をすごした娘ですが、小学校に入ると別の面が見えてきました。

感想文や作文を時々書いてくるのですが、親の欲目を除いても、結構おもしろい文を書いてくるのです。

ああ、この子は口下手だけど、表現手段が文章ならば上手にできるのだなあ・・・。と、神様に感謝したい気持ちになりました。

先日、地区の作文コンクールで賞状ももらってきました。

生まれて初めて実力で取った賞です。
学校の先生はちゃんと見ていてくれてるなあ・・・と心から嬉しかったです。

娘も、こうしたお墨付きをもらったことで、心の支えができたことでしょう。


冒頭に、とっさの切り返しが出来なくて悔しいと、自分のことを書きましたが、
よく考えてみると、そういう才能がないおかげで、相手との関係を決定的に悪くさせるような事態を避けられてる可能性もあるわけです。

一長一短。

口下手でも結構。

人それぞれですよね。



(今回は子供の自慢話でした)


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2001/1/7


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