感情むき出し
私は毎週火曜日を楽しみにしております。 NHK「プロジェクトX」が大好きなのです。毎回「今日も泣くぞお!」ってな感じでTVの前に陣取ります。 私のそんな可憐な姿を見て、嫁さんも心にやさしさがようやく芽生えたのでしょう、、私が9時までに帰宅できないときは黙ってビデオにとっておいてくれたりして、私をますます泣かせてくれます。 ところが、我が家には、そういう機微がわからないやつが一人います。 ある火曜日の9時10分ごろ・・・・・ 「パーパー、○○ちゃん(息子本人の名前)、ポケモンのビデオが見たくなっちゃったー」 「だめ。今日はパパの好きなテレビが9時15分からあるんだ。ビデオは明日にしなさい」 「パパずーるーいー! 自分の好きなテレビばーっかりみてさあ。 ○○ちゃん今日ポケモンのビデオ見てないんだよー!」 ここまで息子(5歳)が話したところで、 私は怒りのあまり気絶するかと思いました。 まず第1に、 私は好きな番組なんて居間でほとんど見せてもらったためしがありません。 だいたい子供がテレビを占領しています。見たいテレビがあっても子供が譲ってくれないので一人で自分の部屋の小さなテレビをさびしく見てるだけです。しかし、やっぱりお父さんじゃないですか。家族と同じ部屋で同じ番組を見たいから、自然子供番組ばっかり見るわけです。 第2に、 息子は、今日ポケモンのビデオはみてないと言ってますが、幼稚園から帰った3時から夕ご飯までの間、メダロットや遊戯王、クレヨンしんちゃんなどの過去のビデオを見まくっているのです。今日見てないのは「ポケモンのビデオ」だけなのです。しかもそれは過去5回は見直してるようなくたびれたビデオなのですよ! 怒りで卒倒しかけた私の横から嫁さんが助け舟を出します。 「○○ちゃん、今日はパパがすっごく見たいテレビがあるんだって。ビデオなんかいつだって見られるでしょう? パパに見せてあげて」 「そうだ! パパだって見たいテレビがあるのだ! 我慢しろ!」 すると息子は・・・・ 「う・・・ん。がばんする・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うぐっ・・・・・・・うぐっ ぐひっ・・・・・・・・・・・ぐひっ・・・・・・・・ ウエッ・・・・・ウェッ・・・・・」 と恨みがましく泣き始めました。 NHKのTVが始まりました。 『これは・・・・に命をかけた男たちの物語である・・・・・・』 「ウェッ・・・・・・ウェ・・・・・グヒッ・・・・・・・・・」 『♪かぜのなかのすーばるー♪・・・・・』 「うええええええ」 「えーい!ちくしょう!! なんだ!お前は! うっとおしい! となりでメーメー泣きゃあがって!ええ!? TV番組で感動しようとしてるオレがバカみたいじゃんか! そこまでしてチャンネル争いをして、 感動できるもんならしてみやがれ! ああ、そうかよ! ああ、わかったよ。 お前は、これまで何回も見た、いつでも見られるビロビロビデオをよりによって、たった今この時間帯に、どーしても見たいわけだな!! あーわかったよ。よーくわかった。 そこまでしてパパの楽しみを台無しにしたいんだな! よーくわかった! もう、お前とは金輪際一緒にテレビを見ないからな! かってにしろ!!!」 と、怒り狂った私は、とても5歳児相手に喋る内容とは思えない啖呵を切って、自分の部屋に閉じこもってしまいました。 あとで冷静になると、バカバカしくてバカバカしくて、反省と言うよりも、オレのこだわってることって、この程度のことかい? 5歳児にジャマされるだけでこんな気分になるものかい?と情けないやらおかしいやら。 しかしですね。 こういう出来事があってから、テレビを見ているとき息子は私に聞くようになりました。 「パパ、このテレビいま見てる?」 「おお、見とるぞ」 「じゃビデオがまんする」 世の子育て評論家諸氏は、子供を叱るときは感情的になっちゃいかんなどとおっしゃいますが、人間が人間の子供を育ててるわけです。そう冷静にいられるはずもございません。 時には感情むき出しの親の姿を見て、子供は心から「ああ、こういうことはしちゃいかんなあ」と思うわけですよ。親の感情を読む練習をすることで、社会に出て必要な『空気を読む』技術も身についていくと思うのです。 と、言うわけで、腹がたったときはこれからも遠慮なく怒ってやろうと思っている私です。そうしないと自分の心が持ちません。だはは。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |