すかたんモノがたり-5


波動砲

  トランペットですね。波動砲ではありません。でもぼくの中では立派な波動砲です。もはや楽器ではない。

  これは高校卒業の時の春休みに買ったものです(もう21年も前かあ)。普通こういうラッパは、ブラスバンド部に所属するか、応援団に所属するか、あこがれのトランペット奏者にあやかるか・・・が購入の動機なんですが、私は違いました。

  高校2年の時に、物理の授業で「波動」の単元を習ったのですが、そのとき「気柱の共鳴」についての説明を受けたとき、なんとも不思議な思いがしたのです。気柱の長さと発している音の波長の長さの倍数が一致すると共鳴するというんですね。しかも開口部が広がっていると音が増幅される。これには驚きました。普通、音を増幅させるためには、電気やらのエネルギーを使って増幅させるのに、長さが合っているというだけで、音がでかくなってしまう! 17歳の多感な少年であった私は、まるで永久機関でも見つけたような気持ちでした。

  それまでも楽器としてトランペットを吹いてみたいとは思っていた私ですが、授業で習って以来「ぜひこの増幅器を我が物にして、思う存分試してみたい」と思うようになりました。でも、高校生の私にはそんなお金はありません。水道のホースや掃除機のホースなどの「気柱」を普段の生活の中に見つけると、もうやたらとぷーぷー吹いてました。ハタから見れば変態です。でも私としては崇高な実験だったのですよ。

  そして高校卒業時に念願かなってトランペットを購入。最初はトランペット教本で練習してドレミファソラシドぐらいはふけるようになりましたが、購入の動機が動機だけにすぐに実験は終わり、押入れの肥やしとあいなりました。もうあれから21年です。

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