父の魂・18

メンコの思い出


 最近小学校では遊戯王カードなるものがはやっているとか。 許せんことに、ガキのくせして「レアもの」のカードに投資しているバカがいるとも聞きます。

私は言いたい! 子どもは子どもらしく、体を使った健全なカードゲーム・・・メンコをしろ!と。


  今回は30年以上前の思い出話です。

メンコ・・・・・・・・・・・

私の故郷(岐阜県東濃地方)では「パンパン」と呼んでましたけどね。
まず、私が育った町(村って言う方が近いかな)のメンコの名称やルールを紹介しま す。

 メンコの呼び名ですが、四角いものを「パン」、丸いものを「カン」と呼んでまし た。
3cm×6cmぐらいの一番一般的な小さな四角いメンコのことを「コパン」、厚い四角いメンコのことを「アツパン」、 直径12センチぐらいの丸いメンコを「1円カン」、1円は購入価格ですよ。 5円ならば「5円カン」。10円カンなんてそれはでっかいメンコで、めったに手に入りま せん。



 勝負のルールは,バトルロイヤルの押し出し勝ち形式でした。 メンコの勝負は、裏返したら勝ち、というルールをとっている場合が多いらしいです が、うちの場合はチョークで書いた四角いリングから弾き飛ばされたら負け。ルールはいろいろ地方によって異なるようですね。

この押し出し形式の方が、「小」が「大」に勝つ醍醐味を得られやすいのです。 5円カンなんてどうあがいたってひっくり返せませんからね。 でも押し出し形式なら、相手のミスに乗じて勝つことができる。 それは快感です。

押し出しですからメンコの端っこを折り曲げて、メンコ同士が当たりやすくします。 その部分を「バコ」とよんでました。

  ゲームの後、取ったメンコを所有できるのを「ホンコ」、 もとの持ち主に返すのを「ウソコ」と言います。
よく上級生が下級生にホンコを強要して、取られた下級生が親に泣きつき 問題になったりしてました。ははは。

「ホンコはいけません!」

なんて学校の先生が注意したりするのですが、 「ホンコ」がいけないんじゃなくて、下級生に強要するのがいけないんですよね。

いかさまをやるつわものもいました。 メンコを打ちつける際、巧妙に指を当ててメンコを弾き飛ばすんですが、 あんまり勢いよく飛んで行くと

「ちょっと指を見せてみろ!」

「ああ、指にチョークがついとる! 手さぐりだ!」


といって、まるで博打のいかさまを見破ったような興奮状態。そんな自分たちに酔ってました。( このいかさまを「手さぐり」とよんでたのよね)


  現在ネットオークションなんかを見ると、結構メンコの古いやつが流通してるようですが、 なかなか買う気になれません。 単に古いメンコじゃなくて、自分が使ってたメンコと同じものがほしいんですよね。
だれか中部地方の人で、古いメンコ分けてくれないかなあ。

  私の故郷の町では、メンコを大切に保存してるやつはあまりいません。

私も実家に1枚も残っていないでしょう。

なぜならば、「ばらまき」という子供だけの風習があったからです。

それは、メンコで遊んでいた少年が、大人への階段を登りはじめる時の儀式のようなものです。

メンコという子ども遊びを卒業しようと決心した少年は、みんなに集合をかけます。

すると次のような情報が近所の子どもにバっと流れます。

「定男くんがばらまくらしいぞ!」

定男くんは、刈り入れが済んだ後の段々田んぼの高いところに仁王立ちしています。

彼の小脇には、彼の所有する歴戦のメンコがいっぱい詰まった箱・・・。

近所の下級生がその下の田んぼに集まります。

まるで、家普請の餅投げの要領で、定男くんは、いろんな思い出の詰まった彼のメンコを わしづかみ、えいっとばかりに下級生に投げてやります。

ワーッ 下級生は大喜びで拾います。

こうして、メンコは次の世代に引き継がれて行くのでした。 だから、中学生ぐらいになると、みんなメンコを1枚も持ってないのです。決して親に捨てられたとかじゃないんですよ。
健気ですよね。


  どうですか。

30歳以上の男の人だったら、このお話のようなことは経験ありますよね。

なんか、我々の小さい頃ってメンコ一つとっても 人生のいろんな大切なことを学んでたような気がしませんか。


・・・と美しくまとめたいところですが・・・・・
まてよ、ひょっとしたら、遊戯王カードのレアものに投資する経験のほうが、これからの子供には、生き抜くために大切なことなのかな・・・・。

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