父の魂・16

思惑はずれ


  私がまだ父親になる前、自慢じゃないですが、私は甥っ子など他人の子供にすごく人気がありました。
まあ、頭のレベルが近かったのか、いつまでたっても子供なのか。

自分自身、子供の頃から色々遊びを工夫してきた人間なので、子供の喜ぶツボは良くわきまえておるつもりです。甥っ子などを相手に新聞紙でいろいろ作ってやると、そりゃあもう尊敬のまなざし。また、自作のお話なんかしてやったりすれば、それは一生懸命聞いてくれました。

そんなわけで私はうぬぼれておりました。
「自分に子供ができたら、その子は幸せだろうなあ。こんな器用な私が親父なら。むふふ」と・・・・

  しかし、他人の子供と自分の子供は根本的に違いました。自分の子は思い通りにならないものです。



  娘や息子が3歳ぐらいになって、さあ、とっておきの面白遊びを披露しよう自信満々で我が子に対峙した私。

「ほうら、新聞紙をこう折るとね・・・・」

これからおもしろくなる・・・というタイミングになると、決まって我が子は

「ああ! ○○ちゃんがやるう!!」

と言いながら私の手から新聞紙を引ったくり、ぐしゃぐしゃにしてしまいます。

んもー!せっかく素敵なパパになろうと思ってたのにい!
本性の子供は何でも自分でやりたがるんですよね。

そうかと思えば
お話をしてやろうと思って、

「むかしむかし、あるところに・・・・」

と、私が話し始めると、決まって我が子は

「ああ! そのおはなし、しってる!つづきは○○ちゃんがはなすね!」

おいおい、俺が初めてはなすネタを知ってるはずがないじゃんかよう、と思っていると

「むかしむかし、あるところに、うんこだいまおうが、いました。そのだいまおうは、いつもうんこをしてましたとさ、おわり。きゃはははは!」

なにがきゃはは!だ!

台無しです。

子供のために良い話をしてやろうと思った私の気持ちが台無しです。

「もう、ええわい! くそう!!」

と、半泣きになって部屋を出て行く私。

「子供と遊んでやるんじゃなかったの?」
と嫁さんがいいます。

「こんな・・・こんなひどい仕打ちをされて、いっしょに遊べるか!
 おれの真心の全てを台無しにしちゃうんだぞ!こいつらは!!」

「子供にそういう配慮なんかあるはずがないじゃない!
 パパは自己満足のために子供と遊んでやってるの!?」

あたりまえだ!
自分も楽しいからこそ遊んでやる気にもなるんじゃないか!

と、まあこんな具合でした。


 でも、さすがに最近は子供も分別がつくようになって、親父の話や行動は完遂させてやった方が、自分たちにとって有益であることがわかったようで、以前のようなことはなくなりました。
先日も広告で吹き矢を作ってやったら喜んでました。だはは。


 まあ、親子ってのは近すぎて、ワクワク感がでにくいのかもしれません。
普段は「うんこないか?」とか「ちゃんとふいたか?」と小うるさい親父がいきなり素敵な話をしてくれようとは思わないんでしょうね。


 しかし、つらつら思んみるに・・・・似たようなことは大人社会にもあります。相手を小ばかにして、人の話を聞こうとしない人っていますよね。
これはその人にとって人生でかなり損をしていると思いますよ。
自分も気をつけようっと。


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