父の魂・29

マジックハンド

先日、息子と石神井池(しゃくじいいけ)に遊びに行ってきました。
その日、RC艦隊さんが石神井池でラジコン潜水艦を走らせるというので、私も我がバラクーダ号を持って行ったのであります。

息子は出がけに

「パパの船が沈んだら、これで助けてやるんだ」

などといいながら、100円ショップで手に入れたこのマジックハンド
を持って車に乗り込みました。

「おいおい(-_-;)、縁起でもないことを言うなよ」

石神井池は、我が家から車で1時間ほどのところにある、わりと大きな池です。周辺の方々の憩いの場所で貸しボート屋さんもけっこう繁盛しています。

細長いその池の中ほどに、ラジコンの船を走らせているオッサンたちの一群が見えました。
かなり年配の方もおられ、イスに座ってのんびりとラジコン船を操作しております。

貸しボートに乗って近くを通りかかる親子連れにラジコン船をスイスイっと近づけてサービスしてあげたりして、なかなかのどかな風景です。

その一群の端っこのほうでRC艦隊さんを見つけました。
「やや、RC艦隊さん、どうもどうも」
RC艦隊さんは、大きな潜水艦とゴジラを持ってきてました。どちらもラジコンです。


さあ、わしもラジコン・バラクーダ号で遊ぶぞう!

「パパー、あのさあ、ボートに乗りたいなあ」

と息子がまたまた絶妙のタイミングで私の気持ちの勢いを止めてくれます。

「待て待て。今日はパパのラジコンで遊ぶためにここに来たんだぞ。ボートは、あと!」

「そうだよ、ボク。今ねえ、ボート乗り場は混んでいるから、乗れないと思うよ」

おお!RC艦隊さん、ナイスフォロー!



私のバラクーダ号はスイスイ走りました。

ああ、やはり私の船には大海原がふさわしい・・・・。
なんて思いながら石神井池で操船です。

息子にもプロポを持たせました。大喜びでラジコン船を操縦するんですが、船を右に曲げるときは右に、左に曲げるときは左に自分の身をよじります。気持ちが強すぎて体まで動いちゃうんですよね。

途中、私がバラクーダ号にバラストキールをつけないまま出港させてしまったために、舵を切った拍子に横転してしまい、あわや沈没か!という騒ぎもありましたが、RC艦隊さん操るラジコン・ゴジラに助けられ命拾いをしました。

これにはもう本当に感謝感激。RC艦隊さんっていい人だなあ。

息子が持ってきたマジックハンドは本当の緊急の時には役に立ちませんでした。ははは。



一通り遊んで小休止です。

RC艦隊さんは親切にも息子にカップのみぞれアイスをくださいました。


みぞれアイスを食べ終わったあと、息子はそのカップでしばらく水遊びをしていたんですが、

そのうち、ちょっと船の真似事がしたくなったのか、カップを池にポイと投げこんでしまいました。

「あ、こら。お前、池にゴミを投げちゃいかんやないか!」

息子としては、船のように浮くかどうか試したかったのでしょう。

しかし、ハタから見れば単なるゴミのポイ捨てにしか見えません。
子供の気持ちはわかりますが、親として叱らないわけにはいきません。

「お前だけだぞ!こんなふうに池にゴミを投げるやつは。ほら、もう取れないところまで流れていっちゃったじゃないか」

みぞれアイスのカップは風に流されて沖のほうへぶかりぶかり。

息子は、自分が悪いことをしちゃったことに気づき、非常にバツが悪そうにしています。


帰り仕度を始めても、息子は捨ててしまったカップが気になります。

私はちょっとイジワルな言い方で

「ほらほら、○○(息子の名前)が捨てたカップ、まだあそこにあるぞ〜」

とからかうと

「ふん!知らないもん!」

と、かなり罪悪感がある様子・・・。けっこう落ち込んでます。



RC艦隊さんに別れを告げ駐車場に向かっていると息子が

「あ!パパ!ボート屋さんすいてるよ。乗ろうよ!」

さすがに5時近くなって人も減り、並んで待たずにボートに乗れそうです。

「しょうがねえなあ。一回だけだぞ」

息子のリクエストで足こぎボートを選んで乗船。
こぐのは私、ハンドルを切るのは息子です。
30分間ペダルを回しつづけるのは辛いですが、しかたがありません。
これで息子の気持ちが晴れるなら・・・・です。

「しゅっぱ〜つ!」

ジャバ ジャバ ジャバ・・・

しばらく漕いで池の中央に出ると、はるかかなたに何やら浮いているものが見えました。

「お!○○、ひょっとしたらあれはお前が捨てたカップじゃないか?」

「え?なにパパ? どこどこ?
・・・・・ああ!ホントだ!」


先ほどカップを捨てたことを責めて息子を落ち込ませてしまったので、ちょいと喜ばせてやろうと

「ようし、○○、今こそお前の汚名を返上するときがきた!
お前のハンドル操作であのカップに見事この船を近づけてみせい!
そうしたら俺がこのマジックハンドで回収してやる!」

と、まるで大作戦の指令のよう声を張り上げ、ムードたっぷりで盛り上げてやリました。

こうなると幼稚園児、もう興奮しまくって

「いよーっし!パパ!しっかりたのむぞ!」

と、レスキュー隊気分です。

そりゃそうです。さっきまで石神井池で一番悪いことをしてしまった人間だと自己嫌悪に陥っていた息子が、その恥ずかしい過去を消し去るチャンスがやってきたのですから。

私はペダルを漕ぎます。

ジャバ ジャバ ジャバ ジャバ・・・・

「パパ!急いで」

「おう」

ジャバ ジャバ ジャバ ジャバ・・・


「パパ!まだとれない?」

「あと1メートルじゃ。機関停止、ようそろ〜
この・・・マジックハンドで、く・・・く・・ようし!つかんだ!」

「やったあ!」

息子は飛び上がらんばかりの喜び様。
これでお前の汚点はこの池から消え失せたぞよ。よかったなあ。

「ようし、さっきのおじさんたちのところに挨拶に行って帰途につくとしよう」

「おう!」

「お!今度は左前方にペットボトルを発見! 
我々は石神井池警備隊として、池に浮いたゴミは見逃すことはできん。
あれも回収じゃ。
今度はお前が、このマジックハンドで回収せい!」

と、またまたムードたっぷりに私が叫びます。

「おう!パパ!やってやるぞ!」

ジャバ ジャバ ジャバ・・・・

息子としては、ゴミを捨てた汚名を返上できたばかりでなく、一転して正義の石神井池警備隊になれたのが嬉しくてたまりません。

「パパ! やったよ! 取れた!」

見事マジックハンドで500mlのペットボトルゴミを回収しました。
もう息子は絶叫です。

「良くやった、○○隊員! 池のみんなも喜んでいるぞ!
さあ、帰ろう」

こうして岸に上がった我々は池で回収したゴミを意気揚揚とゴミ箱に捨てました。



息子のマジックハンドでは、私のラジコン船は救えませんでしたが、彼の誇りは救えたようです。

「パパ!またこの池に来ようね」

「おう!」


2001/8/29

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