すかたんモノがたり-1

 木刀
 私の故郷の岐阜県では小学校の修学旅行で京都と奈良にいってました。その時の男子 の憧れのお土産はなんと言っても「木刀」。お小遣い1,000円なり、の中で真っ 先に候補に上がり予算が割り当てられるモノです。別に剣道をやってるわけじゃないのですが、上級生が持ってるのを見るとすごく欲しくなるんです。そのころ本宮ひろし の「男一匹ガキ大将」も連載されていましたしね。

 でも子どもが買えるような木刀 は、200円ぐらいの、ラワン材を適当に切った、まっすぐな棒のようなトホホな代物。ちゃんとした木刀(赤樫を削って作られたソリの入った立派なもの)は当時でも二千円以上したんじゃなかったかなあ。いつか大人になったら買うんだ!と心に決めてから16年、すっかりそのことは忘れていました。

 16年後のゴールデンウィーク、新婚当時です。嫁さんと二人で十和田湖に旅行にいった時のことです。ふと、土産物屋に入ってみると、あるじゃないですか、立派な赤樫のソリの入った木刀が! 少年の頃の純粋な気持ちがふつふつとよみがえってきました。 「欲しい!」でも二十代の自分は恥ずかしい盛り。いい大人が土産物屋で木刀を買うなんて・・・・。ああ、でも欲しい。その日は観光地を巡りながらそのことばっかり考えて ました。

 さあ、帰るぞ、となって、車で例の土産物屋の前を通りすぎようとしたときです。
我慢できずに嫁さんに言いました。
「ねえ。木刀買ってきてくんない?」

 大の男でさえ恥ずかしいのに、うら若き女性 (当時)にたのむとは! われながら最低のやつです。でも、嫁さんは「一日中、木刀木刀ってうるさいから買ってきてあげるわよ!」とあきれかえって買ってきてくれました。やれ、うれしや! 嫁さんとしては、自分のために買うのではないものは恥ずかしくないようですね。 あれから、いつか木刀で素振りをしたいと思いつつ11年。でも恥ずかしいから振ってません。

(写真は、遠い昔彼の母が十和田湖で購入した木刀を構える息子の勇姿)

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