争いの果ての絶望の中、美しい歌声に誘われてあの少年は現われる
終戦直後の瓦礫の中で、少年は美しい歌声に惹かれて現われる。
その歌声の持ち主はまだ幼い「西からやってきた」子供、鉄雄だった。
こんなにきれいな
歌声は初めてだ、、
少年は鉄雄の
歌声に酔う。
その数年後、鉄雄は母と共に親類を訪ね
北海道の牧場に住んでいた。
優しく鉄雄を守るいとこの琴子、
豪傑な叔父のもと、
鉄雄は牧場で黙々と働く。
そして鉄雄からはいつも
あの歌声が流れているのだった。
しかし、共に「西からやってきた」
母が病に倒れる。
「ピカめ、、」叔父が呟いた。
年頃になり、
琴子はいつしか鉄雄から離れ、結婚した。
こうして鉄雄の歌声を聴いてくれる者もいなくなった。
鉄雄はひとり家を出ていく。
子供の頃から可愛がった愛犬が
寄り添うように後についた
そこへあの少年は再びあらわれた。
少年は鉄雄を華やかなオペラの舞台へ
降り立たせる。
鉄雄は唄った。大観衆の前で、オーケストラを従えて。
「これこそが鉄雄に相応しい、、」少年は万感の思いでそれを
見届けた、、。唄いあげた鉄雄に浴びせられる賞賛の声、、
しかし鉄雄はそれを望んでいたのではないと知る。
そんな鉄雄の前に現われたのは、老いた愛犬だった。
誰に認められるとかではなく、
誰に聴かせたかったのか。
そのことに気付いた鉄雄は満足げに老犬を抱く。
少年の目から涙が流れた。
「なんでそんな顔するの。。」
鉄雄はそう言い残し、
血を吐いて息絶えた。。
時代
昭和20年から〜
場所
日本
モーニング2001No.47に掲載
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