高速電力線搬送通信(PLC)
に関する質問主意書(案)


 高速電力線搬送通信(
PLCPLTもしくはBPL)については新しいブロードバンド通信の担い手としてe-Japan戦略IIにおいて「研究開発の推進やその結果の公開等を通じて実用上の問題がないことが確保されたものについて活用を推進する。」とされている。これを踏まえ総務省は,平成161月に「実験用高速電力線搬送通信設備の設置許可に係る方針の決定」に基づき実験を許可した。さらに同省は平成171月より高速電力線搬送通信に関する研究会(以下「研究会」と言う)を開催し同年12月に一定の結論を得たとされている。同結論では,CISPR22 Class B(パソコンからのノイズ)と同等とされる電力線からの漏洩電界許容値(以下,「研究会許容値」と言う)であれば短波帯においてPLCと無線業務の共存が可能としている。

 しかしながら,研究会の結論に対してはアマチュア無線,短波放送,電波天文がPLCとの共存は困難として反対意見を述べ,平成182月より開催されているCISPR委員会における意見聴取においても研究会が纏めたとされる結論に至る検討が不十分ではないのかとの疑義が出されている。事実,パソコンのごく近傍で短波ラジオを使用するとパソコンからのノイズによりラジオを聴くことは困難であるが,ラジオをパソコンから1m程度以上話せばラジオの聴取に問題はない。一方研究会許容値を設定した際の条件は,電力線から商業地で10m,田園地帯で30m離せばPLCからのノイズは背景雑音程度になるというものであり,PLCを使用している宅内における短波ラジオの使用が困難になることを容認している。明らかに研究会許容値がパソコンからのノイズと同等とは考えられない。

 また,上記CISPR委員会では平成18418日に意見聴取を実施したが,その際,意見聴取を申し出た1名に対し意見聴取への参加を取りやめるようPLC問題を扱う総務省電波環境課が「要望」したとの情報があり,同課が行政として適切な対応を取ったかどうかに関して疑義がある。

以上を踏まえ,PLCの導入に際してはPLCからの漏洩電界許容値が無線業務を保護できることを確保することが急務であること,また,PLC許容値設定手続きが適切であったかを点検する観点から次の事項について質問する。なお,同様の文言が並ぶ場合でも,各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

1.  e-Japan戦略IIにおいて「研究開発の推進やその結果の公開等を通じて実用上の問題がないことが確保されたものについて活用を推進する。」とされている。上記PLC実験許可制度によってこれまでに公開された研究開発結果の一覧を示されたい。

2.  高速電力線通信推進協議会(PLC-J)が2005121516日にベルギー・ブリュッセルにて開催された3rd PLC World Summit (http://www.plcforum.org/popup_3rd_world_summit.html ) において同協議会が実施した測定結果(最大漏洩電界強度=約60dBμV/m)を報告していることを政府は承知しているか答えられたい。

3. CISPRが定めるCISPR22 Class B許容値が,短波帯,VHF帯およびUHF帯の無線業務を確実に保護するための基準を与えている国際電気通信連合無線通信セクター(ITU-R)の関連勧告との間に整合性があるという技術的根拠が得られているかどうかについて答えられたい。

4. PLCからの干渉値が各無線業務を保護するための干渉閾値を超える場合,国際電気通信連合条約の付属文書である無線通信規則(Radio Regulations)15.12章に違反すると考えられるが,これについて政府の考えを述べられたい。

5. 研究会許容値は,電力線から商業地で10m,田園地帯で30m離せば無線業務に影響がないとしているが,これは短波帯の無線業務機器を宅外で運用することを強いていると考えられる。このような状況は一般国民には受け入れがたい制約となると考えられ,e-Japan戦略IIで述べる「実用上の問題」があるのではないかと考えられる。これに関する政府の考えを述べられたい。

6. 我が国においては住宅が密集している地域が多く,建物が隣接するなど建物間の間隔が10mに満たない場合が多い。このような地域でPLCが使用された場合,容易に隣家における短波放送受信等の無線業務に障害を与えると予測されるが,政府の考えを述べられたい。

7.  同様に,建物が密集している場合には,研究会では考慮からはずした累積効果によりより大きな障害が生じると予測されるが,政府の考えを述べられたい。

8.  研究会において,住宅地(Residential Area)および静かな田園地帯(Quiet Rural)を検討対象から外しているのは検討不足と言われてもやむを得ないと考えられるが,はずした理由とこれらの電磁環境に関する検討をどのように進めるかに関して政府の考えを述べられたい。

9.  研究会許容値の元でPLCが運用された場合,短波帯に周波数分配がある各無線業務に与える干渉値とそれぞれの無線業務を保護するためのITU-R関連勧告に定める干渉閾値との差を表に纏めて提示されたい。

10.  平成18418日に開催されたCIPSR委員会での意見聴取を申し出た1名に対して提出した意見を取り下げるよう総務省電波環境課が要望した件は,行政が都合の悪い被意見聴取者を排除したとも考えられ,行政として不適切な措置ではないかとの疑義がある。これについて政府の考えを示されたい。

11. 他国におけるPLCに対する許容値は電界強度で規定されているが,研究会許容値は電流値で規定されている。両規定方式の利点・欠点を述べられたい。

12.  欧州電気通信標準化機構(ETSI)では,平成177月から11月まで有線電気通信網からの放射に関するETSI標準案に対し意見募集を行った。その結果11か国がCISPR 22と同じコモンモード電流規定値では標準化に反対と回答したため平成18313日から17日まで開催されたERM#28において同標準案の検討を中断し今後2年間掛けて見直すことを決めた。この件を政府は把握していたかどうか,また,ETSIにおける有線電気通信網からの放射に関するETSI標準案の見直しに関する政府の見解を答えられたい。

13.  上記ETSIの検討結果,また,CISPR委員会において検討の不備が指摘されたことを踏まえ,我が国におけるPLCに対する許容値を再検討する必要があると考えるが,政府の見解を答えられたい。

 右質問する。