コンセントをネット端子に 電力線通信、
解禁は不透明


朝日新聞

掲載日:2006年09月12日
 

 電気のコンセントをネット端子に変えてしまい、電源コードがインターネットの配線を兼ねる――。

 そんな高速電力線通信(PLC)という技術を解禁するかどうかが、13日にある総務省の電波監理審議会(電監審)で最終判断される。

 国の検討は6年に及ぶが、発生する雑音電波(ノイズ)で短波放送に混信が起き、電波による天体観測が妨害されるなどの反対意見が噴出。土壇場になって行く末が不透明になっている。

 PLCは、本来は電力を供給する電源コードを使い、ネット接続を可能にする技術。コンセントと電源コードの間にPLCモデムという装置をはさむだけで、配線工事なしで手軽に高速インターネット回線が家庭に引けるとして、政府は01年3月、「e−Japan重点計画」に盛り込んで推進してきた。

 ただ電源コード本来の使い方でないため、コードがアンテナのように振る舞い、ノイズが漏れて無線通信や放送に影響が出るのが欠点だ。

 そのため、計画は一時頓挫。03年の重点計画で、家庭のテレビとパソコンなどを結ぶ「屋内に限っての活用」と目的を変え活路を見いだした。

 電監審は、これまでの研究会や技術検討委員会が報告したノイズの規制値が適当かどうかを判断する。一部のメーカーはかなりの投資をしており、すでにPLCモデムを完成させて10月の電子機器見本市で発表する構えだ。4年後に600万台が出荷されるとの推計もあり、「ゴーサイン」を待っている。

 ところが、ここに来て反対の声が強まっている。電監審は8月、審議を控えた意見聴取を行った。関係者によると、賛成は推進協議会などメーカー側のみで、反対意見が大半。反対してきた日本アマチュア無線連盟が突然、賛成に回ったものの、アマチュア無線家らは独自に2000人近い反対署名を集めて提出した。

 天文学者の反対も強い。大石雅寿・国立天文台助教授は「欧米に比肩する成果を上げてきた日本の電波天文学が崩壊する」と話す。「個々のノイズは弱くても、大勢が使えば話は違う。宇宙からの微弱な電波はノイズに埋もれて観測できなくなる」と心配する。

 国内向け短波放送の日経ラジオは「わが社にとって死活問題」。PLCを使う家庭では、短波放送が聞こえなくなるほどのノイズが出ると想定されているためだ。国内には900万台近くの短波ラジオがあるという。

 大阪大学の北川勝浩教授は、理論計算をすると想定外のノイズが大量に出るという文書を電監審に提出。「もっと科学的な検討が必要ではないか」と主張している。

 NEC電力エンジニアリングの安木寿晴技術主幹は「ノイズが出るのは事実だが、市場に製品が出れば利用者の声も集まり、改善点もはっきりしてくる」と語っている。